AI技術

【解説】AIの予測分析が作り出す未来の当たり前

「AIって、たまに聞くけど具体的には何ができるの?」

「AIの予測分析ってどんなメリットがあるの?」

本記事では、そんな悩みを解決していきます。

ビジネスにおいて、「AIを利用して業績を上げていきましょう!」という言葉をよく聞くようになりました。しかし、AIを正しく理解しないまま導入したとしても、思ったように業績を伸ばすことはできません。

結論から言えば、AIは使うことが目的ではなく、AIを利用して何を達成したいかを明確にすることが重要です。本記事ではAIの基本から、ビジネス利用が多いAIの予測分析でできることとメリットを解説します。

AIとは?

まずは、基本のAIについて解説していきましょう。

AIとは、「Artificial Intelligence」の略で一般的に『人工知能』と呼ばれる、コンピュータ・プログラムやシステムです。正確な定義についてはまだ定まってはいませんが、人間の指示を受けることなく自ら動く「自律性」と、経験から学びパフォーマンスを向上させていく「適応性」を兼ね備えたものがAIと言えます。

AIの「自律性」を活用した身近な事例が、車の自動運転でしょう。運転手のハンドル指示なしで、AIが目的地まで車を運転してくれます。また、AIの「適応性」として代表的な事例がチェスです。米IBMが開発したAIコンピューター「ディープ・ブルー」が、チェスの世界王者を倒したことは大きなニュースとなりました。

「ディープ・ブルー」は、チェスの棋譜データを数えきれないほど学習したことで、試合の中で最適解を導き出し続け勝利しました。上記のように、AIとは「自律性」と「適応性」を有した、人間のように考え行動ができるコンピュータ・プログラムと考えておけば良いでしょう。

AIの予測分析とは?

AIの予測分析とは、特定のデータを大量に学習することで、その中に潜むパターンを見つけ出し、未来に起こりうる行動を高精度で予測するAI技術です。実際には、自社で蓄積した顧客情報やWebサイトへのアクセスログといったデータをもとに、ビジネスチャンスを拡大するために利用されます。

利益拡大や他社差別化のために、AIの予測分析を導入する企業が増え続けています。

AIの予測分析でできる6つのこと

ここからは、AIの予測分析でどんなことができるのかを解説していきましょう。具体的には、次の6つが予測分析で可能になると期待されています。

  • 需要予測
  • 業務改善
  • 交通渋滞予測
  • 不正行為検知予測
  • 試験問題予測
  • リスク予測

需要予測

顧客データを分析することで、収益性を左右する需要予測が可能です。具体的には口コミや売上変動の把握から、効果的なキャンペーンをムダなく打って、高い収益を実現させます。

実際に、需要予測を活用している企業がリアルタイム大手回転寿司チェーンの「スシロー」です。店舗での待ち時間やテーブル・カウンターでの着席時間をリアルタイムで分析し、1分後と15分後の注文需要を予測しています。

注文需要予測の活用で必要最小限の材料費とオペレーションの最適化を図り、自社の収益改善に大きく貢献しています。

業務改善

AIの予測分析は、売上予測や資産管理などへ活用することで自社の業務改善も期待できます。売上予測を行うと、計画的な仕入れによりムダな在庫を減らせます。また、適切な生産計画を立てられるので、繁忙期でも残業しなくて済むでしょう。

ホテルでは客室を常に埋めて収益増を狙うために、日付や天候、宿泊客数などを予測分析して金額設定している例もあります。あなたもホテルの予約をするときに、日付で大きく金額が変わっていた経験はありませんか?

効果的に予測を行うことで、業務の効率化を図り、業務改善につなげることができます。

交通渋滞予測

予測分析は、身近な道路の交通渋滞予測にも利用されています。

NTTの「乗換MAPナビ」は、AIの予測分析を活用して、高速道路を対象として30分~1時間後の交通渋滞の予測を行っています。最終的には、一般道路にまで裾野を広げ、利用者の快適なドライブにつなげる予定です。

不正行為検知予測

近年、ランサムウェアに代表されるような、サイバー攻撃による被害が多く発生しています。もはや、これまでセキュリティ防御の要であったファイアウォールだけでは防げない規模になってきました。

そこでAIの予測分析には、不正行為を働く疑いのあるものを予測して阻止するという役目が期待されています。安全性が確保されれば、ネットの利便性はより上がっていくでしょう。

試験問題予測

試験問題の予測にも、AIの予測分析が使われています。

オンライン学習サイトを運営するサイトビジットが、RNNと呼ばれる過去の問題のアルゴリズムを分析して、次の試験にどの分野が出るかを宅建士試験を用いて予測しました。

結果として、78%もの的中率になり、AI予測分析の有用性を示しました。今後は資格試験、国家試験、センター試験などにも試験問題予測が使われる予定です。

受験生の勉強の仕方が、AIでより効率的になることが考えられます。

リスク予測

信用スコアなどのリスク分析もAI予測分析の1種で、リスク予測として挙げられます。信用スコアとは、クレジットカードなどを作る際に、金融機関がきちんと返済能力を持った人かを分析するものです。

過去に似たような人物の返済状況に問題がなかったか、将来性に不安がないかなどの判断をAIによって予測分析し、債務不履行などのリスクを極力減らすことが可能です。

AIの予測分析3つのメリット

AIの予測分析を行うメリットについて、紹介していきます。メリットは以下の3つです。

  • 業務データの有効活用
  • 予測モデル作成の時間短縮
  • ムダの削減

業務データの有効活用

企業で積み上げてきた膨大なデータを予測分析することで、ビジネスチャンスへ有効活用できます。データは、商品、顧客、会計データから、顧客情報、生産、販売、在庫データにいたるまで多岐にわたるはずです。

しかし、従来までデータ分析は、分析を行う人の「スキル」「経験」「ひらめき」に頼っていました。加えて、日本では「データサイエンティスト」と呼ばれるデータ分析の専門家が少ないため、多くの企業が業務データを有効活用できていないという課題を抱えていました。

それがAIによって、膨大な量の業務データでも緻密なデータ分析が可能となり、有効活用できるようになったのです。また、予測分析はデータサイエンティストの人手不足を解消するメリットもあります。

予測モデル作成の時間短縮

上記の業務データの有効活用には、予測モデルが必要ですが、その作成には多大な時間がかかっていました。

三井住友銀行では、業務データの分析に2?3ヶ月かけて行われていました。しかし、予測分析にNECのAI新技術を利用したところ、作成の時間が1日に短縮され、分析の精度もこれまでよりも高い結果が出ました。

AIの予測分析導入により、時間短縮や業務効率化が図られた事例となっています。

ムダの削減

高精度な売上予測は、倉庫内の過剰在庫や過剰仕入れのムダ削減も期待できます。なぜなら、AIの予測分析には過去を学習する「適応性」があるからです。

天候などの条件を踏まえた予測によって、過剰在庫はもちろん、製品の輸送や保管コストのムダも削減できます。

AIの予測分析で知っておくべき手順4ステップ

AIの予測分析を導入するうえで、正しい形で活用できなければ、ただの絵に描いた餅に終わってしまいます。ここからは、AIの予測分析で知っておくべき手順について解説していきます。

1.目的の明確化
2.目的に沿ったデータを用意する
3.目的に合わせてデータを加工する
4.AI予測モデルを作成する

1.目的の明確化

まずは、AIを利用する目的を明確化します。「今期の売上を〇〇%アップさせたい」などです。AIは利用が目的ではなく、AIを利用して何を達成したいかを明確にすることが大切になります。

なぜAIを導入するのか?をとことん考えてください。目的を明確化すると、何がデータとして必要なのかが見えてきます。

2.目的に沿ったデータを用意する

次に、1の目的に沿ったデータを用意します。たとえば「今期の売上を〇〇%アップさせたい」であれば、顧客情報やその属性、新規顧客とリピート顧客の割合、季節によっての売上の違い、口コミ、人気商品の売上に占める割合など、多くのデータが必要になるでしょう。

「どれくらいデータを集めれば良いのか?」という疑問が出てくるかと思いますが、正解はありません。AIの予測分析では、後から必要と感じたデータを追加もできますので、目的に沿ったデータを必要な限り揃えることが重要になってきます。

3.目的に合わせてデータを加工する

揃えたデータは、分析しやすいように加工を施します。ラベル化などを行うことで、目的変数や「リサンプリング」というデータの偏りをなくす加工を行います。他にも、画像データやテキストデータも適切な形式へ加工し準備を整えます。

4.AI予測モデルを作成する

最後にAI予測モデルの作成を行います。アルゴリズム選択は、分析目的に適しているかが重要です。予測結果をベースに業務改善を図り、繰り返し実施することで練度を高め目的達成を目指します。

AIの予測分析が当たり前の世の中に

現在では、まだまだ世の中に広まっていないAIの予測分析も、今後は当たり前の世の中になっていくと予想されます。予測分析でできることは、6種類あり活用方法はさまざまです。

また、メリットや導入手順を正しく把握していなければ、予測分析の効果を最大限に発揮することはできません。本記事を参考にして、ぜひAIの予測分析をより効果的な形でビジネスへ導入することを検討してみましょう。

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